山本こどもクリニック

【山本こどもクリニック】浜松市東区の小児科,アレルギー科,呼吸器科

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喘息の思い出 小児科医のひとり言

喘息治療の思い出1・予防法がなかったころ

喘息治療の変遷とその思い出



喘息の治療はここ10数年で大きく変わったといわれます。
私が小児科医になってからの20数年でたしかに大きな変化がありました。
(平成15年7月記)
 

1・予防法がなかったころ


20年以上前には、喘息発作を予防するには、ほとんどステロイド内服しかなく、しかも大量長期使用が必要で肥満や低身長、多毛などの副作用が避けられませんでした。
このころの私はは「安易にステロイドを使わずに、発作の時を呼吸法で乗り切ろう」と考えていました。多くの喘息にたずさわる小児科医がそうだったと思います。
喘息の人は、運動で発作がでることから運動を避け、精神的にも肉体的にもますます虚弱になっていくのではないかとの心配しました。そこで発作を起こしにくい運動である水泳やスキーを勧めて特別扱いを受けないようにと考えました。
体を鍛えれば発作が出なくなるのではないかとも期待しました。後に鍛錬では喘息発作を我慢できるようになっても、喘息自体をよくすることはできないことはよくわかりました。

(ところで、現在では、プールの塩素が喘息にとってよくないことが分かってきて、喘息のある人ではプールでの水泳を制限しています。)

喘息治療の思い出2・テオフィリンや吸入ステロイドが使えるようになった

テオフィリン(点滴薬名ネオフィリン)の血中濃度が測れるようになり、ネオフィリン点滴静脈注射のコツがわかるようになって、喘息発作をとりあえず止めらるようになりました。春や秋には夜間に大発作の人を毎日何人も点滴して帰宅させていました。すべて入院させていたら入院ベッドが一杯になって他の病気の人を入院させられなくなるので、喘息発作は外来で帰すようにしていたのです。
やむを得ないとはいえ、良い医療とはほど遠いものでした。当時の治療を受けられた方は、さぞかし不愉快で苦痛だったろうと思いますが、精一杯だったのです。
当時はテオフィリンは自分で液体クロマトグラフィーを使用して測定していました。

1978年ステロイド吸入のベクロメサゾン(アルデシン)が発売されました。
内服の100分の1以下の量でしかも体内へのい吸収量はさらに微量というのは画期的でした。しかし、当時の印象は、大発作を頻発している人に使っても「一向に効かない使い物にならない薬」でした。
今にして思えば、喘息発作を予防する長期管理薬(コントローラー)専門の吸入ステロイドに発作治療薬(レリーバー)の役割を期待していたのが間違いでした。
発作治療薬であるテオフィリンを、濃度を保つように内服して予防しようという考えは、徐放性テオフィリンのテオドール錠が発売された1984年から現実になりました。
それまでは作用時間の短いもの(テオナPなど)しかなかったのです。
1987年に小児用のテオドール顆粒が発売されました。本当に嬉しかったけれど、まずくて飲めない人が多くて困りました。味の改良されたテオドールドライシロップの発売は1995年です。
テオドールを予防的に内服する治療が確立し、それでも発作の止まらない人にはβ刺激剤の定期吸入を導入して、大発作の人は激減しました。もっとも、β刺激剤の定期吸入は、それだけでは気道過敏性を増すことが後に知られ、もし実施するなら抗炎症剤(吸入ステロイドかインタール、最近テオフィリンにも抗炎症効果があるらしいといわれる)との併用が必須といわれています。

 

喘息治療の思い出3・ピークフロー管理を始めて吸入ステロイドの効果が分かった

ステロイド吸入が効く薬であるが私に分かったのはピークフロー管理をはじめてからでした。
1993年に外来の5歳以上の喘息児全員にピークフローメーターの購入を勧め、記録してもらってはじめて、自分の喘息の治療の評価が出来、コントロールの悪い人にステロイド吸入をするとピークフロー値がよくなることがわかったのです。
1993年に外来でのピークフロー管理をはじめたのは、ミニライトピークフローメーターが、それまでの1万4千円から、現在の3千8百円に値下げされたためです。それまで病院の備品として購入し入院患者さんにのみ測定していたピークフローを通院している人にも購入してもらって測定してもらうようにしたのです。
実施してみると最高ピークフロー値が予想よりずいぶん高いのには驚きました。1998年アレルギー学会の小児ピークフロー基準値が低すぎて役に立たなかったのです。
これは学会でも指摘し、その後改訂されました。

 

喘息治療の思い出4・2003年春の私の治療

現在の私の小児喘息治療は、軽症の人には、発作の時だけβ刺激剤の内服か貼り薬(ホクナリンテープ)、発作を予防しなくてはいけない人には、テオドールとβ刺激剤の内服か貼り薬、それで予防できなければ、追加の治療としてコンプレッサー型吸入器を購入してもらってインタールとβ刺激剤(メプチンかベネトリン)の定期吸入をするかステロイドの吸入にするかを家族に選択してもらっています。コンプレッサー型吸入器(パリターボボーイを使用)は2万数千円するので吸入器を必ずしも優先はしていません。吸入器でもうまくいかなければ、当然ステロイド吸入を加えることになります。
吸入器の使用がステロイドより前になる場合を除けば、これは小児気管支喘息治療管理ガイドラインとほぼ同じ治療です。
より効果の高い吸入ステロイドのフルタイドが発売された今は、成人ではまず吸入ステロイドを勧めます。小児では、ステロイドに拒否反応をしめされる親御さんがまだ多いこと、4歳以下では吸入ステロイドがうまく吸入できないことがこうした治療の順序になっています。
吸入器で吸入できる液状の吸入ステロイドが販売されれば、小児でも吸入ステロイドを第一選択にするかもしれません。
これからも数年ごと治療法は変わるでしょう。

 

喘息治療の思い出5・吸入ステロイドについて

内服ステロイドは肥満や低身長、多毛、高血圧、眼圧上昇(緑内障)、骨がもろくなる、などの副作用があり、また長期内服後に中断するとショック状態になることもあります。ステロイドは本来は人体で合成される生命維持に不可欠なホルモンですが、内服すると体内合成しなくても間に合い、合成をさぼるために内服中止後にホルモン不足になるためです。
吸入ステロイドでも同じような副作用がおこるのではないか?特に成長抑制があるのではないか?という疑問がありましたが、現在は否定されています。
ステロイド吸入でも眼圧が上がるとの報告もあったのですが、私が調べたステロイド吸入の約100名では大丈夫でした。もっとも学問的にはステロイドがどれくらいしっかり吸入されているかを明らかにしないといけないので学会発表はしていません。
吸入ステロイドは小児では成人より少ない量が設定されていますが、効果をあらわすには成人量と同じ量が必要な印象があります。
9歳前後から呼吸機能検査が実施でき、フローボリュウム曲線から気管支の傷み具合が想像できます。喘息治療では、毎日のピークフロー測定と呼吸機能検査で治療効果の判定をします。その経験からの印象です。

 

6・参考文献

GINA2002(日本語版)(協和企画)
小児気管支喘息治療管理ガイドライン2000、2002(協和企画)
喘息予防管理ガイドライン1998(協和企画通信)
喘息の診断管理NIHガイドライン第2版(医学書院)